った。数歩の後《のち》、小林は突然津田の方を向いた。
「津田君、僕は淋《さむ》しいよ」
 津田は返事をしなかった。二人はまた黙って歩いた。浅い河床《かわどこ》の真中を、少しばかり流れている水が、ぼんやり見える橋杭《はしぐい》の下で黒く消えて行く時、幽《かす》かに音を立てて、電車の通る相間《あいま》相間に、ちょろちょろと鳴った。
「僕はやっぱり行くよ。どうしても行った方がいいんだからね」
「じゃ行くさ」
「うん、行くとも。こんな所にいて、みんなに馬鹿にされるより、朝鮮か台湾に行った方がよっぽど増しだ」
 彼の語気は癇走《かんばし》っていた。津田は急に穏やかな調子を使う必要を感じた。
「あんまりそう悲観しちゃいけないよ。年歯《とし》さえ若くって身体《からだ》さえ丈夫なら、どこへ行ったって立派に成効《せいこう》できるじゃないか。――君が立つ前一つ送別会を開こう、君を愉快にするために」
 今度は小林の方がいい返事をしなかった。津田は重ねて跋《ばつ》を合せる態度に出た。
「君が行ったらお金《きん》さんの結婚する時困るだろう」
 小林は今まで頭のなかになかった妹の事を、はっと思い出した人のように津
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