半睡の間に、辛《かろ》うじて持続した。室《へや》の四角《よすみ》が寝ていられないほど明るくなって、外部《そと》に朝日の影が充《み》ち渡ると思う頃、始めて起き上った津田の瞼《まぶた》はまだ重かった。彼は楊枝《ようじ》を使いながら障子《しょうじ》を開けた。そうして昨夜来の魔境から今ようやく覚醒した人のような眼を放って、そこいらを見渡した。
 彼の室の前にある庭は案外にも山里らしくなかった。不規則な池を人工的に拵《こしら》えて、その周囲に稚《わか》い松だの躑躅《つつじ》だのを普通の約束通り配置した景色は平凡というよりむしろ卑俗であった。彼の室に近い築山の間から、谿水《たにみず》を導いて小さな滝を池の中へ落している上に、高くはないけれども、一度に五六筋の柱を花火のように吹き上げる噴水まで添えてあった。昨夜《ゆうべ》彼の睡眠を悩ました細工の源《みなもと》を、苦笑しながら明らさまに見た時、彼の聯想《れんそう》はすぐこの水音以上に何倍か彼を苦しめた清子の方へ推《お》し移った。大根《おおね》を洗えばそれもこの噴水同様に殺風景なものかも知れない、いやもしそれがこの噴水同様に無意味なものであったらたまらないと彼は考えた。
 彼が銜《くわ》え楊枝《ようじ》のまま懐手《ふところで》をして敷居の上にぼんやり立っていると、先刻《さっき》から高箒《たかぼうき》で庭の落葉を掃《は》いていた男が、彼の傍《そば》へ寄って来て丁寧に挨拶《あいさつ》をした。
「お早う、昨夜《さくや》はお疲れさまで」
「君だったかね、昨夕《ゆうべ》馬車へ乗ってここまでいっしょに来てくれたのは」
「へえ、お邪魔様で」
「なるほど君の云った通り閑静だね。そうしてむやみに広い家《うち》だね」
「いえ、御覧の通り平地《ひらち》の乏しい所でげすから、地ならしをしてはその上へ建て建てして、家が幾段にもなっておりますので、――廊下だけは仰せの通りむやみに広くって長いかも知れません」
「道理で。昨夕僕は風呂場へ行った帰りに迷児《まいご》になって弱ったよ」
「はあ、そりゃ」
 二人がこんな会話を取り換《か》わせている間に、庭続の小山の上から男と女がこれも二人づれで下りて来た。黄葉《こうよう》と枯枝の隙間《すきま》を動いてくる彼らの路《みち》は、稲妻形《いなずまがた》に林の裡《うち》を抜けられるように、また比較的急な勾配《こうばい》を楽に上《
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