の方に向いていた。
十分の後《のち》五人はまた河野中佐《こうのちゅうさ》といっしょに家を出てすぐ小蒸気に移った。海軍の将校が下士や水兵を使うのは実に簡潔|明瞭《めいりょう》である。船は河野中佐の云いなり次第の速力で、思う通りの方角へ出た。港の入口ではここかしこの潜水器へ船の上から空気を送っている。船の数は十|艘《そう》近くあった。みんな波に揺られて上《あが》ったり下《さが》ったりしている。我々五人のも固《もと》より平《たいら》ではない。鏡のように見えた湾の入口がこうまで動いているとは思いがけなかった。波で身体の調子が浮いたり沈んだりする上に、強い日が頭から射《い》りつけるので、少し胸が悪くなった。河野さんは軍人だから、そんな事に気のつくはずがない。ああ云う喞筒《ポンプ》で空気を送るのは旧式でね、時々潜水夫を殺してしまいますよと講釈をしている。田中君はふうんとさも感心したらしく聞いている。
河野さんの話によると、日露戦争の当時、この附近に沈んだ船は何艘《なんそう》あるか分らない。日本人が好んで自分で沈めに来た船だけでもよほどの数になる。戦争後何年かの今日《こんにち》いまだに引揚げ切れ
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