りで両人《ふたり》を引張って来た。
陳列所は固《もと》より山の上の一軒家で、その山には樹《き》と名のつくほどの青いものが一本も茂っていないのだから、はなはだ淋《さび》しい。当時の戦争に従事したと云う中尉のA君がただ独《ひと》り番をしている。この尉官は陳列所に幾十種となく並べてある戦利品について、一々|叮嚀《ていねい》に説明の労を取ってくれるのみならず、両人を鶏冠山《けいかんざん》の上まで連れて行って、草も木もない高い所から、遥《はるか》の麓を指さしながら、自分の従軍当時の実歴譚《じつれきだん》をことごとく語って聞かせてくれた人である。始め佐藤から砲台案内を依頼したときには、今日はちと差支《さしつか》えがあるから四時頃までならと云う条件であったが、山の出鼻へ立って洋剣《サーベル》を鞭《むち》の代りにして、あちらこちらと方角を教える段になると、肝心《かんじん》の要事はまるでそっちのけにして、満洲の赤い日が、向うの山の頂《いただき》に、大きくなって近づくまで帰ろうとは云わなかった。もし忘れたんじゃ気の毒だと思って、こっちから注意すると、何ようございます、構いませんと断りながら、ますます講釈
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