れと云うんです。表向《おもてむき》にすると厳《きび》しいものですから、こうして見物に来た時、そうっと売りつけようてんで、支那人は実《じつ》に狡猾《こうかつ》ですからね。
 支那の陵守《りょうもり》も無論狡猾だろうが、金の玉を安く買おうと云う番頭もあまり正直な方じゃない。番頭はそっと銭《ぜに》をやって金の玉をポッケットへ入れたようである。
 壁の上を歩くと太い樹が眼の下に見える。桑があんなに大きくなってますと番頭が指《ゆびさ》した。なるほど一抱《ひとかかえ》もある。この四角な壁の一側《ひとかわ》は長さどのくらいかねと尋ねると、へえ今|勘定《かんじょう》して見ましょうと云いながら、一歩《ひとあし》二尺の割で、一二三四と歩いて行った。余は壁の外を見下《みおろ》して、そこらを絡《から》んでいる赤い木の実を眺めていた。せっかく番頭の勘定した壁の長さは忘れてしまった。

        五十一

 撫順《ぶじゅん》は石炭の出る所である。そこの坑長《こうちょう》を松田さんと云って、橋本が満洲に来る時、船中で知己《ちかづき》になったとかで、その折の勧誘通り明日《あす》行くと云う電報を打った。汽車に乗る
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