ないから西洋間と日本間の唯一の主人として、この一日を物静かに休養すべく準備した。まず何よりも横になるのが薬だろうと思って、狸《たぬき》だか狐《きつね》だか分らない毛皮の上にごろりと転がった。すると窓の外から橋本の声で、おいおいちょっと出て見ろと呼んでいる。彼《か》れまだそこいらを迷《まご》ついてるなと思うと、少し面白くなったから、請求通《せいきゅうどおり》原の中へ草履《ぞうり》のまま出た。すると広い牧場のようなところに、馬が三匹立っていた。それがいずれも小汚《こぎた》ない駄馬《だうま》だったのではなはだ愉快であった。のみならず、その中《うち》の一匹がどうしても大重君を乗せようと云わない。傍《そば》へ行くと、飛んだり蹴《け》たりする。馬が怖《こわ》がるからだと云って、手拭《てぬぐい》で眼隠《めかく》しをして、支那の小僧が両手で轡《くつわ》をしっかり抑えている。遠くから見ると、馬が鉢巻《はちまき》をしたようでおかしかった。その傍へ大重君が苦笑いをしながら近寄って行くところは、一層面白かった。しかも一度や二度ではない。よほど馬に遠慮する性質《たち》と見えて、容易に埒《らち》を明けないから、み
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