れると命を取られる。ある時氷に路を塞《ふさ》がれて仕方がないから、船を棄《す》てて氷の上へ上《あが》って、乗り捨てた船を引《ひ》き摺《ず》って向う側へ出て、ようやくまた船に乗ったと云う話がある。これは主人《あるじ》の実歴談《じつれきだん》である。
サンパンは妙なところへ着いた。岸は芦《あし》を畳んでできている。石垣ではなくて芦垣《あしがき》である。こうしなければ水の力で浚《さら》われる恐れがあると云う。芦はいくらでも水を吸い込んで平気でいるから無難だと見える。細い小路《こうじ》を突き抜けると、支那町の真中へ出た。妙な臭《におい》がする。先刻《さっき》から胸が痛むのでポッケットから、粉薬《こぐすり》を出して飲もうとするがあいにく水がない。一滴の飲料も用いずに散薬を呑《の》み下《くだ》す方法は、その後《ご》苦《くる》し紛《まぎ》れに発見した分別《ふんべつ》だが、この時はまだそれほど老練な患者でないので、拝むように主人を煩《わずら》わした。主人はええ訳はありませんと云いつつも、ずいぶん烈《はげ》しく引張り廻した上、ほとんど苦しくって道傍《みちばた》に竦《すく》みそうになった頃、ようやく一軒
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