て壁に似ている。その上部には西洋の御城のように、形儀《ぎょうぎ》よく四角な孔《あな》をいくつも開けて、一ぱし櫓《やぐら》の体裁《ていさい》を示している。しかし一番人の注意を惹《ひ》くのは、この孔から見える赤い旗である。旗の数は孔の数だけあって、孔の数は一つや二つではないから、ちょっと賑《にぎや》かに思われる。始めてこの景色《けしき》が眼に触れた時には、村のお祭りで、若いものが、面白半分に作り物でも拵《こしら》えたのじゃなかろうかと推測した。ところがこの櫓は馬賊の来襲に備えるために、梨畑《なしばたけ》の主人が、わざわざ家の四隅《よすみ》に打ち建てたのだと聞いて、半分は驚いたが、半分はおかしかった。ただなぜあんな赤い旗を孔の間から一つずつ出しているかが、さっぱり分らなかった。裏側へ廻って、段々を上《のぼ》って見て、始めてこの赤旗の一つが一挺の鉄砲を代表している事を知った。鉄砲は博物館にでもありそうな古風な大きいもので、どれもこれも錆《さび》を吹いていた。弾丸《たま》を込めても恐らく筒《つつ》から先へ出る気遣《きづかい》はあるまいと思われるほど、安全に立てかけられていた。もっとも赤い旗だけは
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