た。薄く流れる河の厚さは昨日《きのう》と同じようにほとんど二三寸しかないが、その真中に鉄の樋竹《といだけ》が、砂に埋《うも》れながら首を出しているのに気がついたので、あれは何だいと下女に聞いて見た。あれはボアリングをやった迹《あと》ですと下女が答えた。満洲の下女だけあって、述語《じゅつご》を知っている。ついこの間雨が降って、上《かみ》の方から砂を押し流して来るまでは、河の流れがまるで違った見当を通っていたので、あすこへ湯場《ゆば》を新築するつもりであったのだと云う。河の流れが一雨《ひとあめ》ごとに変るようでは、滅多《めった》なところへ風呂を建てる訳にも行くまい。現に窓の前の崖《がけ》なども水にだいぶん喰われている。
 そのうち雨が歇《や》んだ。退屈だから横になった。約十分も立ったと思う頃、下女がまたやって来て、ただいま駅から電話がかかりまして、これから梨畑へおいでになるなら、駅からトロを仕立てますがと云う問い合せである。雨が歇んだので、座敷に寝ている口実はもう消滅してしまったが、この上トロを仕立てられては敵《かな》わないと思って、わざわざ晴かかった空を見上げて、八の字を寄せた。
 今か
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