、苛《いた》く濁っていた。易《か》えてやらなければならない。また大きな手を籠の中へ入れた。非常に要心して入れたにもかかわらず、文鳥は白い翼《つばさ》を乱して騒いだ。小い羽根が一本抜けても、自分は文鳥にすまないと思った。殻は奇麗に吹いた。吹かれた殻は木枯がどこかへ持って行った。水も易えてやった。水道の水だから大変冷たい。
 その日は一日淋しいペンの音を聞いて暮した。その間には折々千代千代と云う声も聞えた。文鳥も淋しいから鳴くのではなかろうかと考えた。しかし縁側《えんがわ》へ出て見ると、二本の留《とま》り木《ぎ》の間を、あちらへ飛んだり、こちらへ飛んだり、絶間《たえま》なく行きつ戻りつしている。少しも不平らしい様子はなかった。
 夜は箱へ入れた。明《あく》る朝《あさ》目が覚《さ》めると、外は白い霜《しも》だ。文鳥も眼が覚めているだろうが、なかなか起きる気にならない。枕元にある新聞を手に取るさえ難儀《なんぎ》だ。それでも煙草《たばこ》は一本ふかした。この一本をふかしてしまったら、起きて籠から出してやろうと思いながら、口から出る煙《けぶり》の行方《ゆくえ》を見つめていた。するとこの煙の中に、首
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