見受けます。申すまでもなく私は極《きわ》めて画道には暗い人間であります。だから画の事に関して嘴《くちばし》を容《い》れる権利は無論ないのですが、門外漢の云う事も時には御参考になるだろうし、こうして諸君に御目にかかる機会も滅多《めった》にありませず、かつ文芸全体に通じての議論ですから、大胆なところを述べてしまいます。――あなた方の方では人間を御かきになるときはモデルを御使いになります、草や木を御かきになるときは野外もしくは室内で写生をなさいます。これはまことに結構な事で、我々文学者が四畳半のなかで、夢のような不都合な人物、景色、事件を想像して好加減《いいかげん》な事を並べて平気でいるよりも遥《はるか》に熱心な御研究であります。その効能は固《もと》より御承知の事で、私などがかれこれ申すのも釈迦《しゃか》に何とかいう類《たぐい》になりますが、まず講話の順序として分らぬながら、分ったと思う事だけを述べます。こう云う修業で得る点は私の考えではまず二通りになるだろうと思います。一つは物の大小形状及びその色合などについて知覚が明暸《めいりょう》になりますのと、この明暸になったものを、精細に写し出す事
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