に半鐘を擦《す》るようなもので、ちょっと景気はいいようだが、どいたどいたと駆《か》けて行く連中は、あとから大に迷惑致すだろうと察せられます。人生に触れろと御注文が出る前に、人生とはこんなもの、触れるとはあんなもの、すべてのあんな、こんなを明暸にしておいてさてかような訳だから技巧は無用じゃないかと仰せられたなら、その時始めて御相手を致しても遅くはなかろうと思って、それまでは差し控える事に致しております。もし私の方で申す人生に触れるという意味が御承知になりたければ今じきに明暸なる御答えを仕《つかまつ》ってもよろしいが、ついでもある事だから、次の節まで待っていただきましょう。
 御待遠だといかぬから、すぐさま次の節に移って弁じます。文学者の一部分で、しきりに触れろ触れろと云い、技巧は無用だ無用だと云っているに反して、画家の方では――画家は我々のように騒々しくない、おとなしく勉強しておられるから、むやみに三《み》つ番《ばん》は敲《たた》かれぬようであるが――しかしその実行しておられるところを拝見すると、触れるの触れぬのと云う事は頓着《とんじゃく》なくただ熱心に技術を研《みが》いておられるように
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