くるまでにはよほど多量の貝を平げました。その場はそれで済みまして、いよいよ細君を連れて宅へ帰って見ますと、貝の利目《ききめ》はたちまちあらわれて、細君はその月から懐妊して、玉のような男子か女子か知りませんが生み落して老人は大満足を表すると云うのが大団円であります。ゾラ君は何を考えてこの著作を公けにされたものか存じませんが、私の考では前に挙《あ》げたモーパッサン氏よりもある方面に向って一歩進んだ理想がなくってはとうてい書きこなせない作物だと思います。よく下民の聚合《しゅうごう》する寄席《よせ》などへ参ると、時々妙な所で喝采《かっさい》する事があります。普通の人が眉《まゆ》を顰《ひそ》める所に限って喝采するから妙であります。ゾラ君なども日本へ来て寄席へでも出られたら、定めし大入を取られる事であろうと存じます。
 現代文学は皆この弊に陥《おちい》っているとは無論断言しませんが、いろいろな点においてこの傾向を帯びていることは疑いもないと思います。そうしてこの傾向は真の一字を偏重視《へんちょうし》するからして起った多少病的の現象だと云うてもよいだろうと思います。諸君は探偵と云うものを見て、歯《よ
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