る)つまりはスペースと云うものがあって、万物はその中に、各《おのおの》、ある席を占めている。次に今日の演説は一時から始まります。そうしていつ終るか分りませんが、まあいつか終るでしょう。大概は日が暮れる前に終る事と思います。私がこうやって好加減《いいかげん》な事をしゃべって、それが済むとあとから、上田さんが代ってまた面白い講話がある。それから散会となる。私の講話も、上田さんの演説も皆経過する事件でありまして、この経過は時間と云うものがなければ、どうしても起る訳に参りません。これも明暸《めいりょう》な事で別段改めて申上げる必要はない。最後に、なぜ私がここにこうやって出て来て、しきりに口を動かしているかと云えば、これは酔狂《すいきょう》や物数奇《ものずき》で飛出して来たと思われては少し迷惑であります。そこにはそれ相当な因縁《いんねん》、すなわち先刻申上げた大村君の鄭重《ていちょう》なる御依頼とか、私の安受合とか、受合ったあとの義務心とか、いろいろの因縁《いんねん》が和合したその結果かくのごとくフロックコートを着て参りました。この関係を(人事、自然に通じて)因果《いんが》の法則と称《とな》えて
前へ
次へ
全108ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夏目 漱石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング