、正、邪、曲、直の区別さえ分らなくて昏々濛々《こんこんもうもう》としてアミーバのような生活を送ります。こんな連中は人間さえ見れば誰も彼もみな同じ物だと思って働きかけます。それは頭が不明暸《ふめいりょう》なんだからだと注意してやると、かえって吾々を軽蔑《けいべつ》したり、罵倒したりするから厄介です――しかしこれはここで云う事ではない。演説の足が滑《すべ》って泥溝《どぶ》の中へちょっと落ちたのです。すぐ這《は》い上《あが》って真直に進行します。
 吾人は今申す通り我[#「我」に白丸傍点]に対する物[#「物」に白丸傍点]を空間に放射して、分化作用でこれを精細に区別して行きます。同時に我[#「我」に白丸傍点]に対してもまた同様の分化作用を発展させて、身体と精神とを区別する。その精神作用を知、情、意、の三に区別します。それからこの知を割り、情を割り、その作用の特性によってまたいろいろに識別して行きます。この方面は主として心理学者と云うものが専門として担任しているから、これらの人に聞くのが一番わかりやすい。もっとも心理学者のやる事は心の作用を分解して抽象してしまう弊《へい》がある。知情意は当を得た
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