ょう》にまた箸を取ったが、どことなくそわそわした様子で、まだ段落のつかない用談をそのままに、少し失礼する腹が痛いからと云って自分の部屋に帰った。田口は下女を呼んで、今から十五分以内にAが外出するだろうから、出るときは車が待ってでもいたように、Aが何にも云わない先に彼を乗せて馳《か》け出して、その思わく通りどこの何という家《うち》の門《かど》へおろすようにしろと云いつけた。そうして自分はAより早く同じ家へ行って、主婦《かみさん》を呼ぶや否や、今おれの宿の提灯《ちょうちん》を点《つ》けた車に乗って、これこれの男が来るから、来たらすぐ綺麗《きれい》な座敷へ通して、叮嚀《ていねい》に取扱って、向うで何にも云わない先に、御連様《おつれさま》はとうから御待兼《おまちかね》でございますと云ったなり引き退がって、すぐおれのところへ知らせてくれと頼んだ。そうして一人で煙草《たばこ》を吹かして腕組をしながら、事件の経過を待っていた。すると万事が旨《うま》い具合に予定の通り進行して、いよいよ自分の出る順が来た。そこでAの部屋の傍《そば》へ行って間の襖《ふすま》を開けながら、やあ早かったねと挨拶《あいさつ》す
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