を一人雇って、充分の時間を与えた上、できるだけAの心を動かすように艶《なま》めかしく曲《くね》らしたもので、誰が貰《もら》っても嬉《うれ》しい顔をするに足るばかりか、今日の新聞を見たら、明日《あした》ここへ御着のはずだと出ていたので、久しぶりにこの手紙を上げるんだから、どうか読みしだい、どこそこまで来ていただきたいと書いたなかなか安くないものであった。彼はその晩自分でこの手紙をポストへ入れて、翌日配達の時またそれを自分で受取ったなり、Aの来るのを待ち受けた。Aが着いても彼はこの手紙をなかなか出さなかった。力《つと》めて真面目《まじめ》な用談についての打合せなどを大事らしくし続けて、やっと同じ食卓で晩餐《ばんさん》の膳《ぜん》に向った時、突然思い出したように袂《たもと》の中からそれを取り出してAに与えた。Aは表に至急親展とあるので、ちょっと箸《はし》を下に置くと、すぐ封を開いたが、少し読み下《くだ》すと同時に包んである写真を抜いて裏を見るや否《いな》や、急に丸めるように懐《ふところ》へ入れてしまった。何か急《いそぎ》の用でもできたのかと聞くと、いや何というばかりで、不得要領《ふとくようり
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