して見ないと分りませんし。私ばかりでこうもしたい、ああもしたいといくら熱急《やきもき》思ってもこればかりは致し方がございません」と何だか意味のありそうな事を云った。一度|退《ひ》きかけた敬太郎の好奇心はこの答でまた打ち返して来そうにしたが、善《よ》くないという克己心《こっきしん》にすぐ抑えられた。
母はなお田口の弁護をした。そんな忙がしい身体《からだ》だから、時によると心にもない約束違いなどをする事もあるが、いったん引き受けた以上は忘れる男ではないから、まあ旅行から帰るまで待って、緩《ゆっ》くり会ったら宜《よ》かろうという注意とも慰藉《いしゃ》ともつかない助言《じょごん》も与えた。
「矢来のはおっても会わん方で、これは仕方がございませんが、内幸町のはいないでも都合さえつけば馳《か》けて帰って来て会うといった風の性質《たち》でございますから、今度旅行から帰って来さえすれば、こっちから何とも云ってやらないでも、向うできっと市蔵のところへ何とか申して参りますよ。きっと」
こう云われて見ると、なるほどそういう人らしいが、それはこっちがおとなしくしていればこそで、先刻《さっき》のようにぷんぷ
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