ん怒ってはとうてい物にならないにきまり切っている。しかし今更《いまさら》それを打ち明ける訳には行かないので、敬太郎はただ黙っていた。須永の母はなお「あんな顔はしておりますが、見かけによらない実意のある剽軽者《ひょうきんもの》でございますから」と云って一人で笑った。
十三
剽軽者という言葉は田口の風采《ふうさい》なり態度なりに照り合わせて見て、どうも敬太郎《けいたろう》の腑《ふ》に落ちない形容であった。しかし実際を聞いて見ると、なるほど当っているところもあるように思われた。田口は昔《むか》しある御茶屋へ行って、姉さんこの電気灯は熱《ほて》り過ぎるね、もう少し暗くしておくれと頼んだ事があるそうだ。下女が怪訝《けげん》な顔をして小さい球と取り換えましょうかと聞くと、いいえさ、そこをちょいと捻《ねじ》って暗くするんだと真面目《まじめ》に云いつけるので、下女はこれは電気灯のない田舎《いなか》から出て来た人に違ないと見て取ったものか、くすくす笑いながら、旦那電気はランプと違って捻《ひね》ったって暗くはなりませんよ、消えちまうだけですから。ほらねとぱちッと音をさせて座敷を真暗に
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