玄関を騒がせるものだから、まずこの邪魔を追っ払った後でというつもりになって、じれったさの余り自分と取次に出たのだという。須永にこの顛末《てんまつ》を聞かされた時に、敬太郎はますます自分の挨拶《あいさつ》が丁寧《ていねい》過ぎたような気がした。

        九

 中一日《なかいちにち》置いて、敬太郎《けいたろう》は堂々と田口へ電話をかけて、これからすぐ行っても差支《さしつかえ》ないかと聞き合わせた。向うの電話口へ出たものは、敬太郎の言葉つきや話しぶりの比較的|横風《おうふう》なところからだいぶ位地の高い人とでも思ったらしく、「どうぞ少々御待ち下さいまし、ただいま主人の都合をちょっと尋ねますから」と丁寧な挨拶をして引き込んだが、今度返事を伝えるときは、「ああ、もしもし今ね、来客中で少し差支えるそうです。午後の一時頃来るなら来ていただきたいという事です」と前よりは言葉がよほど粗末《ぞんざい》になっていた。敬太郎は、「そうですか、それでは一時頃上りますから、どうぞ御主人に宜《よろ》しく」と答えて電話を切ったが、内心は一種|厭《いや》な心持がした。
 十二時かっきりに午飯《ひるめし》を食
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