るようなところに、彼の快感を惹《ひ》いた。けれどもその快感のうちには涙が交っていた。苦痛を逃《のが》れるために已《やむ》を得ず流れるよりも、悲哀をできるだけ長く抱《いだ》いていたい意味から出る涙が交《まじ》っていた。彼は独身ものであった。小児に対する同情は極めて乏しかった。それでも美くしいものが美くしく死んで美くしく葬られるのは憐《あわ》れであった。彼は雛祭《ひなまつり》の宵《よい》に生れた女の子の運命を、あたかも御雛様のそれのごとく可憐《かれん》に聞いた。
 彼は須永《すなが》の口から一調子《ひとちょうし》狂った母子《おやこ》の関係を聞かされて驚ろいた。彼も国元に一人の母を有《も》つ身であった。けれども彼と彼の母との関係は、須永ほど親しくない代りに、須永ほどの因果《いんが》に纏綿《てんめん》されていなかった。彼は自分が子である以上、親子の間を解し得たものと信じて疑わなかった。同時に親子の間は平凡なものと諦《あき》らめていた。より込み入った親子は、たとえ想像が出来るにしても、いっこう腹にはこたえなかった。それが須永のために深く掘り下げられたような気がした。
 彼はまた須永から彼と千代子
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