ように、どうでしたと尋ねた。僕はまあ安心だろうよと答えた。実際僕は安心したような心持だったのである。で、明《あく》る日は新橋へ見送りにも行かなかった。

        十

 約束の音信《たより》は至る所からあった。勘定《かんじょう》すると大抵日に一本ぐらいの割になっている。その代り多くは旅先の画端書《えはがき》に二三行の文句を書き込んだ簡略なものに過ぎなかった。僕はその端書が着くたびに、まず安心したという顔つきをして、妻《さい》からよく笑われた。一度僕がこの様子なら大丈夫らしいね、どうも御前の予言の方が適中したらしいと云った時、妻は愛想《あいそ》もなく、当り前ですわ、三面記事や小説見たような事が、滅多《めった》にあってたまるもんですかと答えた。僕の妻は小説と三面記事とを同じ物のごとく見傚《みな》す女であった。そうして両方とも嘘《うそ》と信じて疑わないほど浪漫斯《ロマンス》に縁の遠い女であった。
 端書に満足した僕は、彼の封筒入の書翰《しょかん》に接し出した時さらに眉《まゆ》を開いた。というのは、僕の恐れを抱《いだ》いていた彼の手が、陰欝《いんうつ》な色に巻紙を染めた痕迹《こんせき》
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