慰さめた。姉はしまいにやや納得《なっとく》したらしい顔つきをして、みんなと夕食《ゆうめし》を共にするまで話し込んだ。帰る時には散歩がてら、子供を連れて電車まで見送ったが、それでも気がすまないので、子供を先へ返して、断わる姉の傍《そば》に席を取ったなり、とうとう彼女の家まで来た。
 僕は幸い二階にいた市蔵を姉の前に呼び出した。御母さんが御前の事を大層心配してわざわざ矢来《やらい》まで来たから、今おれがいろいろに云ってようやく安心させたところだと告げた。したがって旅行に出すのは、つまり僕の責任なんだから、なるべく年寄に心配をかけないように、着いたら着いた所から、立つなら立つ所から、また逗留《とうりゅう》するなら逗留する所から、必ず音信《たより》を怠《おこ》たらないようにして、いつでも用ができしだいこっちから呼び返す事のできる注意をしたら好かろうと云った。市蔵はそのくらいの面倒なら僕に注意されるまでもなくすでに心得ていると答えて、彼の母の顔を見ながら微笑した。
 僕はこれで幾分か姉の心を柔らげ得たものと信じて十一時頃また電車で矢来へ帰って来た。
 僕を迎《むかえ》に玄関に出た妻は、待ちかねた
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