髪のでき上らない先に二階へ上《あが》った。僕のような神経質なものが拘《こだ》わって来ると、無関係の人の眼にはほとんど小供らしいと思われるような所作《しょさ》をあえてする。僕は中途で鏡台の傍《そば》を離れて、美くしい島田髷《しまだまげ》をいただく女が男から強奪《ごうだつ》する嘆賞の租税を免《まぬ》かれたつもりでいた。その時の僕はそれほどこの女の虚栄心に媚《こ》びる好意を有《も》たなかったのである。
僕は自分で自分の事をかれこれ取り繕《つく》ろって好く聞えるように話したくない。しかし僕ごときものでも長火鉢《ながひばち》の傍《はた》で起るこんな戦術よりはもう少し高尚な問題に頭を使い得るつもりでいる。ただそこまで引き摺《ず》り落された時、僕の弱点としてどうしても脱線する気になれないのである。僕は自分でそのつまらなさ加減をよく心得ていただけに、それをあえてする僕を自分で憎《にく》み自分で鞭《むち》うった。
僕は空威張《からいばり》を卑劣と同じく嫌《きら》う人間であるから、低くても小《ち》さくても、自分らしい自分を話すのを名誉と信じてなるべく隠さない。けれども、世の中で認めている偉い人とか高い
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