結はより効目《ききめ》のある相手として、すぐ年の若い千代子を選んだ。千代子は固《もと》より誰彼の容赦なく一様に気易《きやす》く応対のできる女だったので、御嬢様と呼びかけられるたびに相当の受答《うけこたえ》をして話を勢《はず》ました。千代子の泳の噂《うわさ》が出た時、髪結は活溌《かっぱつ》で宜《よろ》しゅうございます、近頃の御嬢様方はみんな水泳の稽古《けいこ》をなさいますと誰が聞いても拵《こしら》えたような御世辞を云った。
妙な事を吹聴《ふいちょう》するようでおかしいが、実をいうと僕は女の髪を上げるところを見ているのが好きであった。母が乏《とも》しい髪を工面して、どうかこうか髷《まげ》に結《ゆ》い上げる様子は、いくら上手《じょうず》が纏《まと》めるにしても、それほど見栄《みばえ》のある画《え》ではないが、それでも退屈を凌《しの》ぐには恰好《かっこう》な慰みであった。僕は髪結の手の動く間《ま》に、自然とでき上って行く小さな母の丸髷《まるまげ》を眺《なが》めていた。そうして腹の中で、千代子の髪を日本流に櫛《くし》を入れたらさぞみごとだろうと思った。千代子は色の美くしい、癖のない、長くて多過
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