ておいた。その嫉妬は程度において昨日《きのう》も今日《きょう》も同じだったかも知れないが、それと共に競争心はいまだかつて微塵《みじん》も僕の胸に萌《きざ》さなかったのである。僕も男だからこれから先いつどんな女を的《まと》に劇烈な恋に陥《おちい》らないとも限らない。しかし僕は断言する。もしその恋と同じ度合の劇烈な競争をあえてしなければ思う人が手に入らないなら、僕はどんな苦痛と犠牲を忍んでも、超然と手を懐《ふとこ》ろにして恋人を見棄ててしまうつもりでいる。男らしくないとも勇気に乏しいとも、意志が薄弱だとも、他《ひと》から評したらどうにでも評されるだろう。けれどもそれほど切ない競争をしなければわがものにできにくいほど、どっちへ動いても好い女なら、それほど切ない競争に価《あたい》しない女だとしか僕には認められないのである。僕には自分に靡《なび》かない女を無理に抱《だ》く喜こびよりは、相手の恋を自由の野に放ってやった時の男らしい気分で、わが失恋の瘡痕《きずあと》を淋《さみ》しく見つめている方が、どのくらい良心に対して満足が多いか分らないのである。
 僕は千代子にこう云った。――
「千代ちゃん行っ
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