てあんな所へ迎に行けるんでしょう」と千代子は笑いながら、高木の手から双眼鏡を受取った。
 婆さんは何|直《じき》ですと答えて、草履《ぞうり》を穿《は》いたまま、石段を馳《か》け下りて行った。叔父は田舎者《いなかもの》は気楽だなと笑っていた。吾一は婆さんの後《あと》を追かけた。百代子はぼんやりして汚ない縁へ腰をおろした。僕は庭を見廻した。庭という名のもったいなく聞こえる縁先は五坪《いつつぼ》にも足りなかった。隅《すみ》に無花果《いちじく》が一本あって、腥《なま》ぐさい空気の中に、青い葉を少しばかり茂らしていた。枝にはまだ熟しない実《み》が云訳《いいわけ》ほど結《な》って、その一本の股《また》の所に、空《から》の虫籠《むしかご》がかかっていた。その下には瘠《や》せた鶏が二三羽むやみに爪を立てた地面の中を餓《う》えた嘴《くちばし》でつついていた。僕はその傍《そば》に伏せてある鉄網《かなあみ》の鳥籠《とりかご》らしいものを眺《なが》めて、その恰好《かっこう》がちょうど仏手柑《ぶしゅかん》のごとく不規則に歪《ゆが》んでいるのに一種|滑稽《こっけい》な思いをした。すると叔父が突然、何分|臭《くさ》
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