ごめんこうむ》って雨防衣《レインコート》を脱ごうと云い出した。
 家は下から見たよりもなお小さくて汚なかった。戸口に杓子《しゃくし》が一つ打ちつけてあって、それに百日風邪《ひゃくにちかぜ》吉野平吉一家一同と書いてあるので、主人の名がようやく分った。それを見つけ出して、みんなに聞こえるように読んだのは、目敬《めざと》い吾一の手柄であった。中を覗《のぞ》くと天井も壁もことごとく黒く光っていた。人間としては婆さんが一人いたぎりである。その婆さんが、今日は天気がよくないので、おおかたおいでじゃあるまいと云って早く海へ出ましたから、今浜へ下りて呼んできましょうと断わりを述べた。舟へ乗って出たのかねと叔父が聞くと、婆さんは多分あの船だろうと答えて、手で海の上を指《さ》した。靄《もや》はまだ晴れなかったけれども、先刻《さっき》よりは空がだいぶ明るくなったので、沖の方は比較的|判切《はっきり》見える中に、指された船は遠くの向うに小さく横《よこた》わっていた。
「あれじゃ大変だ」
 高木は携《たずさ》えて来た双眼鏡を覗《のぞ》きながらこう云った。
「随分|呑気《のんき》ね、迎《むか》いに行くって、どうし
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