んなに価《あたい》が高かったろう。僕は母を欺《あざ》むく材料に自然から使われる自分を心苦しく思って、門を出る時振り返って見たら、母も叔母もまだこっちを見ていた。
途中まで来た頃、千代子は思い出したように突然とまって、「あっ高木さんを誘うのを忘れた」と云った。百代子はすぐ僕の顔を見た。僕は足の運びを止《と》めたが、口は開かなかった。「もう好いじゃないの、ここまで来たんだから」と百代子が云った。「だってあたし先刻《さっき》誘ってくれって頼まれたのよ」と千代子が云った。百代子はまた僕の顔を見て逡巡《ためら》った。
「市《いっ》さんあなた時計持っていらしって。今何時」
僕は時計を出して百代子に見せた。
「まだ間に合わない事はない。誘って来るなら来ると好い。僕は先へ行って待っているから」
「もう遅いわよあなた。高木さん、もしいらっしゃるつもりならきっと一人でもいらしってよ。後から忘れましたって詫《あや》まったらそれで好《よ》かないの」
姉妹は二三度押問答の末ついに後戻りをしない事にした。高木は百代子の予言通りまだ汽車の着かないうちに急ぎ足で構内へ這入《はい》って来て、姉妹に、どうも非道《ひ
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