ど》い、あれほど頼んでおくのにと云った。それから御母さんはと聞いた。最後に僕の方を向いて、先ほどはと愛想《あいそ》の好い挨拶《あいさつ》をした。
十九
その晩は叔父と従弟《いとこ》を待ち合わした上に、僕ら母子《おやこ》が新たに食卓に加わったので、食事の時間がいつもより、だいぶ後《おく》れたばかりでなく、私《ひそ》かに恐れた通りはなはだしい混雑の中《うち》に箸《はし》と茶椀の動く光景を見せられた。叔父は笑いながら、市《いっ》さんまるで火事場のようだろう、しかし会《たま》にはこんな騒ぎをして飯を食うのも面白いものだよと云って、間接の言訳をした。閑静な膳《ぜん》に慣れた母は、この賑《にぎ》やかさの中に実際叔父の言葉通り愉快らしい顔をしていた。母は内気な癖にこういう陽気な席が好きなのである。彼女はその時偶然口に上《のぼ》った一塩《ひとしお》にした小鰺《こあじ》の焼いたのを美味《うま》いと云ってしきりに賞《ほ》めた。
「漁師《りょうし》に頼んどくといくらでも拵《こしら》えて来てくれますよ。何なら、帰りに持っていらっしゃいな。姉さんが好きだから上げたいと思ってたんですが、つい
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