話であった彼は、叔母の語るところによると、そうではなくって全く英吉利《イギリス》で教育された男であった。叔母は英国流の紳士という言葉を誰かから聞いたと見えて、二三度それを使って、何の心得もない母を驚ろかしたのみか、だからどことなく品《ひん》の善いところがあるんですよと母に説明して聞かせたりした。母はただへえと感心するのみであった。
二人がこんな話をしている内、僕はほとんど一口も口を利《き》かなかった。ただ上部《うわべ》から見て平生の調子と何の変るところもない母が、この際高木と僕を比較して、腹の中でどう思っているだろうと考えると、僕は母に対して気の毒でもありまた恨《うら》めしくもあった。同じ母が、千代子対僕と云う古い関係を一方に置いて、さらに千代子対高木という新らしい関係を一方に想像するなら、はたしてどんな心持になるだろうと思うと、たとい少しの不安でも、避け得られるところをわざと与えるために彼女を連れ出したも同じ事になるので、僕はただでさえ不愉快な上に、年寄にすまないという苦痛をもう一つ重ねた。
前後の模様から推《お》すだけで、実際には事実となって現われて来なかったから何とも云い兼ね
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