うだとか、大仏がどっちの見当にあたるとかいうさほどでもない事を、問題らしく聞いたり教えたりしていた。百代子は千代子に彼らの父がその日の夕方までに来ると云って、わざわざ知らせて来た事を告げた。二人は明日《あす》魚を漁《と》りに行く時の楽みを、今|眼《ま》の当りに描《えが》き出して、すでに手の内に握った人のごとく語り合った。
「高木さんもいらっしゃるんでしょう」
「市《いっ》さんもいらっしゃい」
 僕は行かないと答えた。その理由として、少し宅《うち》に用があって、今夜東京へ帰えらなければならないからという説明を加えた。しかし腹の中ではただでさえこう混雑《ごたごた》しているところへ、もし田口が吾一でも連れて来たら、それこそ自分の寝る場所さえ無くなるだろうと心配したのである。その上僕は姉妹《きょうだい》の知っている高木という男に会うのが厭《いや》だった。彼は先刻《さっき》まで二人と僕の評判をしていたが、僕の来たのを見て、遠慮して裏から帰ったのだと百代子から聞いた時、僕はまず窮屈な思いを逃《のが》れて好かったと喜こんだ。僕はそれほど知らない人を怖《こわ》がる性分なのである。
 僕の帰ると云うのを
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