僕はやむを得ないからこの問題は卒業するまで解決を着けずにおこうと云い出した。母は不安の裏《うち》に一縷《いちる》の望を現わした顔色をして、もう一遍とくと考えて見てくれと頼んだ。
こういう事情で、今まで母一人で懐《ふところ》に抱《だ》いていた問題を、その後《のち》は僕も抱かなければならなくなった。田口はまた田口流に、同じ問題を孵《かえ》しつつあるのではなかろうか。たとい千代子をほかへ縁づけるにしても、いざと云う場合には一応こちらの承諾を得る必要があるとすれば、叔父も気がかりに違いない。
七
僕は不安になった。母の顔を見るたびに、彼女を欺《あざ》むいてその日その日を姑息《こそく》に送っているような気がしてすまなかった。一頃《ひところ》は思い直してでき得るならば母の希望通り千代子を貰《もら》ってやりたいとも考えた。僕はそのためにわざわざ用もない田口の家へ遊びに行ってそれとなく叔父や叔母の様子を見た。彼らは僕の母の肉薄に応ずる準備としてまえもって僕を疎《うと》んずるような素振《そぶり》を口にも挙動にもけっして示さなかった。彼らはそれほど浅薄なまた不親切な人間ではなかった
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