《ぶあいきょう》なものだね」と云って笑い出した。須永も突然おかしくなったと見えて笑い出した。それから後《あと》は二人の気分と同じように、二人の会話も円満に進行した。敬太郎が須永から「君もこの頃はだいぶ落ちついて来たようだ」と評されても、彼は「少し真面目《まじめ》になったかね」とおとなしく受けるし、彼が須永に「君はますます偏窟《へんくつ》に傾くじゃないか」と調戯《からか》っても、須永は「どうも自分ながら厭《いや》になる事がある」と快よく己《おの》れの弱点を承認するだけであった。
 こういう打ち解けた心持で、二人が差し向いに互の眼の奥を見透《みとお》して恥ずかしがらない時に、千代子の問題が持ち出されたのは、その真相を聞こうとする敬太郎に取って偶然の仕合せであった。彼はまず一週間ほど前耳にした彼女が近いうちに結婚するという噂《うわさ》を皮切《かわきり》に須永を襲《おそ》った。その時須永は少しも昂奮《こうふん》した様子を見せなかった。むしろいつもより沈んだ調子で、「また何か縁談が起りかけているようだね。今度は旨《うま》く纏《まと》まればいいが」と答えたが、急に口調《くちょう》を更《か》えて、「
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