ふだん》と異ならない元気な様子を、何遍もくり返して聞かした。松本は腕組をして、「どうもやっぱり不思議だよ」と云ったが、「おい御仙《おせん》、ここへ寝かしておくのは可哀《かわい》そうだから、あっちの座敷へ連れて行ってやろう」と細君を促《うな》がした。千代子も手を貸した。
五
手頃な屏風《びょうぶ》がないので、ただ都合の好い位置を択《よ》って、何の囲《かこ》いもない所へ、そっと北枕に寝かした。今朝方《けさがた》玩弄《おもちゃ》にしていた風船玉を茶の間から持って来て、御仙がその枕元に置いてやった。顔へは白い晒《さら》し木綿《もめん》をかけた。千代子は時々それを取り除《の》けて見ては泣いた。「ちょっとあなた」と御仙が松本を顧《かえり》みて、「まるで観音様《かんのんさま》のように可愛《かわい》い顔をしています」と鼻を詰らせた。松本は「そうか」と云って、自分の坐っている席から宵子の顔を覗《のぞ》き込んだ。
やがて白木の机の上に、櫁《しきみ》と線香立と白団子が並べられて、蝋燭《ろうそく》の灯《ひ》が弱い光を放った時、三人は始めて眠から覚《さ》めない宵子と自分達が遠く離れてしま
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