《たんび》の声を見出した上、人物としてもどこか偉そうに思われる点が、時々彼の眼を射るようにちらちら輝やいたにもかかわらず、その前に坐《すわ》っている間、彼は始終《しじゅう》何物にか縛《しば》られて自由に動けない窮屈な感じを取り去る事ができなかった。絶えず監視の下《もと》に置かれたようなこの状態は、一時性のものでなくって、いくら面会の度数を重ねても、けっして薄らぐ折はなかろうとまで彼には見えたくらいである。彼はこういう風に気のおける田口と反対の側に、何でも遠慮なく聞いて怒られそうにない、話し声その物のうちにすでに懐《なつ》かし味の籠《こも》ったような松本を想像してやまなかった。

        八

 翌朝《よくあさ》さっそく支度をして松本に会いに行こうと思っているとあいにく寒い雨が降り出した。窓を細目に開けて高い三階から外を見渡した時分には、もう世の中が一面に濡《ぬ》れていた。屋根瓦《やねがわら》に徹《とお》るような佗《わ》びしい色をしばらく眺《なが》めていた敬太郎《けいたろう》は、田口の紹介状を机の上に置いて、出ようか止そうかとちょっと思案したが、早く会って見たいという気が強く起る
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