った。その代り報告の結末が来ても、まだ何か予期しているように、今までの態度を容易に変えなかった。敬太郎は仕方なしに、「それだけです。実際つまらない結果で御気の毒です」と言訳をつけ加えた。
「いやだいぶ参考になりました。どうも御苦労でした。なかなか骨が折れたでしょう」
田口のこの挨拶《あいさつ》の中《うち》に、大した感謝の意を含んでいない事は無論であったが、自分が馬鹿に見えつつある今の敬太郎にはこれだけの愛嬌《あいきょう》が充分以上に聞こえた。彼は辛うじて恥を掻《か》かずにすんだという安心をこの時ようやく得た。同時に垂味《たるみ》のできた気分が、すぐ田口に向いて働らきかけた。
「いったいあの人は何なんですか」
「さあ何でしょうか。あなたはどう鑑定しました」
敬太郎の前には黒の中折《なかおれ》を被《かぶ》って、襟開《えりあき》の広い霜降《しもふり》の外套《がいとう》を着[#「着」は底本では「来」]た男の姿がありありと現われた。その人の様子といい言葉遣《ことばづか》いといい歩きつきといい、何から何まで判切《はっきり》見えたには見えたが、田口に対する返事は一口も出て来なかった。
「どうも分
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