てんまつ》を、どうして握る事ができたかの苦心談を、まず冒頭に敷衍《ふえん》して、二つある同じ名の停留所の迷った事から、不思議な謎《なぞ》の活《い》きて働らく洋杖《ステッキ》を、どう抱《かか》え出して、どう利用したかに至るまでを、自分の手柄《てがら》のなるべく重く響くように、詳しく述べたかったのであるが、会うや否《いな》や四時と五時とのいきさつでやられた上に、勝手に見張りの時間を延ばした源因になる例の女が、源因にも何にもならない見ず知らずの女だったりした不味《まず》いところがあるので、自分を広告する勇気は全く抜けていた。それで男と女が洋食屋へ入ってから以後の事だけをごく淡泊《あっさ》り話して見ると、宅《うち》を出る時自分が心配していた通り、少しも捕《つら》まえどころのない、あたかも灰色の雲を一握り田口の鼻の先で開いて見せたと同じような貧しい報告になった。

        四

 それでも田口は別段|厭《いや》な顔も見せなかった。落ちついた腕組をしまいまで解かずに、ただふんとか、なるほどとか、それからとか云う繋《つな》ぎの言葉を、時々|敬太郎《けいたろう》のために投げ込んでくれるだけであ
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