と》める女の態度もまた同時に認めない訳に行かなかった。だからこの女の落ちつきは、自分で自分の神経を殺しているという自覚に伴《とも》なったものだと彼は勘定《かんてい》していた。
 ところが今|後《うしろ》から見た女は身体といい気分といい比較的沈静して両方の間に旨《うま》く調子が取れているように思われた。彼女《かのおんな》は先刻と違って、別段姿勢を改ためるでもなく、そろそろ歩き出すでもなく、宝石商の窓へ寄り添うでもなく、寒さを凌《しの》ぎかねる風情《ふぜい》もなく、ほとんど閑雅《かんが》とでも形容したい様子をして、一段高くなった人道の端《はじ》に立っていた。傍《そば》には次の電車を待ち合せる人が二三散らばっていた。彼らは皆向うから来る車台を見つめて、早く自分の傍《そば》へ招き寄せたい風に見えた。敬太郎が立ち退《の》いたので大いに安心したらしい彼女は、その中《うち》で最も熱心に何かを待ち受ける一人《いちにん》となって、筋向うの曲り角をじっと注意し始めた。敬太郎は派出所の陰を上《かみ》へ廻って車道へ降りた。そうしてペンキ塗の交番を楯《たて》に、巡査の立っている横から女の顔を覘《ねら》うように見
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