徒事《いたずら》とばかり思って、別段意にも留《とど》めなかったが、婆さんは丹念にそれを五六寸の長さに縒《よ》り上げて、文銭の上に載《の》せた。
「これを御覧なさい。こう縒り合わせると、一本の糸が二筋の糸で、二筋の糸が一本の糸になるじゃありませんか。そら派手《はで》な赤と地味な紺《こん》が。若い時にはとかく派手の方へ派手の方へと駆《か》け出してやり損《そこ》ない勝《がち》のものですが、あなたのは今のところこの縒糸《よりいと》みたように丁度《ちょうど》好い具合に、いっしょに絡《から》まり合っているようですから御仕合せです」
 絹糸の喩《たとえ》は何とも知らず面白かったが、御仕合せですと云われて見ると、嬉《うれ》しいよりもかえっておかしい心持の方が敬太郎を動かした。
「じゃこの紺糸で地道《じみち》を踏んで行けば、その間にちらちら派手な赤い色が出て来ると云うんですね」と敬太郎は向うの言葉を呑《の》み込んだような尋ね方をした。
「そうですそうなるはずです」と婆さんは答えた。始めから敬太郎は占ないの一言《いちごん》で、是非共右か左へ片づけなければならないとまで切《せつ》に思いつめていた訳でもなかっ
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