ば観音様《かんのんさま》の繁華《はんか》を耳にした。仲見世《なかみせ》だの、奥山《おくやま》だの、並木《なみき》だの、駒形《こまかた》だの、いろいろ云って聞かされる中には、今の人があまり口にしない名前さえあった。広小路に菜飯《なめし》と田楽《でんがく》を食わせるすみ屋という洒落《しゃれ》た家があるとか、駒形の御堂の前の綺麗《きれい》な縄暖簾《なわのれん》を下げた鰌屋《どじょうや》は昔《むか》しから名代《なだい》なものだとか、食物《くいもの》の話もだいぶ聞かされたが、すべての中《うち》で最も敬太郎の頭を刺戟《しげき》したものは、長井兵助《ながいひょうすけ》の居合抜《いあいぬき》と、脇差《わきざし》をぐいぐい呑《の》んで見せる豆蔵《まめぞう》と、江州伊吹山《ごうしゅういぶきやま》の麓《ふもと》にいる前足が四つで後足《あとあし》が六つある大蟇《おおがま》の干し固めたのであった。それらには蔵《くら》の二階の長持の中にある草双紙《くさぞうし》の画解《えとき》が、子供の想像に都合の好いような説明をいくらでも与えてくれた。一本歯の下駄《げた》を穿《は》いたまま、小さい三宝《さんぼう》の上に曲《しゃ》
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