思って、後《あと》から跟《つ》いて行こうとすると、父は敬太郎に向って、御前はそこにいて、時計を見ていろ、そうして十二時が鳴り出したら、大きな声を出して合図をしてくれ、すると御父さんがあの乾《いぬい》に当る梅の根っこを掘り始めるからと云いつけた。敬太郎は子供心にまた例の家相だと思って、時計がちんと鳴り出すや否や命令通り、十二時ですようと大きな声で叫んだ。それで、その場は無事に済んだが、あれほど正確に鍬《くわ》を下ろすつもりなら、肝心《かんじん》の時計が狂っていないようにあらかじめ直しておかなくてはならないはずだのにと敬太郎は父の迂闊《うかつ》をおかしく思った。学校の時計と自分の家《うち》のとはその時二十分近く違っていたからである。ところがその後《ご》摘草《つみくさ》に行った帰りに、馬に蹴《け》られて土堤《どて》から下へ転がり落ちた事がある。不思議に怪我《けが》も何もしなかったのを、御祖母《おばあ》さんが大層喜んで、全く御地蔵様が御前の身代りに立って下さった御蔭《おかげ》だこれ御覧《ごらん》と云って、馬の繋《つな》いであった傍《そば》にある石地蔵の前に連れて行くと、石の首がぽくりと欠けて、
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