も大した影響が起らないため、どうでも好いという怠けた心持がいつしらず働らくからである。彼は眠い時に本を読む人が、眠気《ねむけ》に抵抗する努力を厭《いと》いながら、文字の意味を判明《はっきり》頭に入れようと試みるごとく、呑気《のんき》の懐《ふところ》で決断の卵を温めている癖に、ただ旨《うま》く孵化《かえ》らない事ばかり苦にしていた。この不決断を逃《のが》れなければという口実の下《もと》に、彼は暗《あん》に自分の物数奇《ものずき》に媚《こ》びようとした。そうして自分の未来を売卜者《うらないしゃ》の八卦《はっけ》に訴えて判断して見る気になった。彼は加持《かじ》、祈祷《きとう》、御封《ごふう》、虫封《むしふう》じ、降巫《いちこ》の類《たぐい》に、全然信仰を有《も》つほど、非科学的に教育されてはいなかったが、それ相当の興味は、いずれに対しても昔から今日《こんにち》まで失わずに成長した男である。彼の父は方位九星《ほういきゅうせい》に詳しい神経家であった。彼が小学校へ行く時分の事であったが、ある日曜日に、彼の父は尻を端折《はしょ》って、鍬《くわ》を担《か》ついだまま庭へ飛び下りるから、何をするのかと
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