にえ》きらない思いに悩んでいる姿になってしまった。須永の母の保証するところでは、田口という老人は見かけに寄らない親切気のある人だそうだから、あるいは旅行から帰って来た上で、また改めて会ってくれないとも限らない。が、こっちからもう一遍会見の都合を問い合せたりなどして、常識のない馬鹿だと軽蔑《さげす》まれてもつまらない。けれどもどの道突き抜けた心持をしっかり捕《つら》まえるためには馬鹿と云われるまでも、そこまで突っかけて行く必要があるだろう。――敬太郎は屈託しながらもいろいろ考えた。

        十五

 けれども身の一大事を即座に決定するという非常な場合と違って、敬太郎《けいたろう》の思案には屈託の裏《うち》に、どこか呑気《のんき》なものがふわふわしていた。この道をとどのつまりまで進んで見ようか、またはこれぎりやめにして、さらに新らしいものに移る支度をしようか。問題は煎《せん》じつめるまでもなく当初から至極《しごく》簡単にでき上っていたのである。それに迷うのは、一度|籤《くじ》を引き損《そく》なったが最後、もう浮ぶ瀬はないという非道《ひど》い目に会うからではなくって、どっちに転んで
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