「だって僕は今日までそうして来たんだもの」
「だから君は豆腐屋らしくないと云うのだよ」
「これから先、また豆腐屋らしくなってしまうかも知れないかな。厄介《やっかい》だな。ハハハハ」
「なったら、どうするつもりだい」
「なれば世の中がわるいのさ。不公平な世の中を公平にしてやろうと云うのに、世の中が云う事をきかなければ、向《むこう》の方が悪いのだろう」
「しかし世の中も何だね、君、豆腐屋がえらくなるようなら、自然えらい者が豆腐屋になる訳だね」
「えらい者た、どんな者だい」
「えらい者って云うのは、何さ。例《たと》えば華族《かぞく》とか金持とか云うものさ」と碌さんはすぐ様えらい者を説明してしまう。
「うん華族や金持か、ありゃ今でも豆腐屋じゃないか、君」
「その豆腐屋|連《れん》が馬車へ乗ったり、別荘を建てたりして、自分だけの世の中のような顔をしているから駄目だよ」
「だから、そんなのは、本当の豆腐屋にしてしまうのさ」
「こっちがする気でも向がならないやね」
「ならないのをさせるから、世の中が公平になるんだよ」
「公平に出来れば結構だ。大いにやりたまえ」
「やりたまえじゃいけない。君もやらな
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