ねった首を真直《まっすぐ》にして、圭さんがこう云った。
「それから鍛冶屋《かじや》の前で、馬の沓《くつ》を替《か》えるところを見て来たが実に巧《たく》みなものだね」
「どうも寺だけにしては、ちと、時間が長過ぎると思った。馬の沓がそんなに珍しいかい」
「珍らしくなくっても、見たのさ。君、あれに使う道具が幾通りあると思う」
「幾通りあるかな」
「あてて見たまえ」
「あてなくっても好《い》いから教えるさ」
「何でも七つばかりある」
「そんなにあるかい。何と何だい」
「何と何だって、たしかにあるんだよ。第一爪をはがす鑿《のみ》と、鑿を敲《たた》く槌《つち》と、それから爪を削《けず》る小刀と、爪を刳《えぐ》る妙《みょう》なものと、それから……」
「それから何があるかい」
「それから変なものが、まだいろいろあるんだよ。第一馬のおとなしいには驚ろいた。あんなに、削られても、刳られても平気でいるぜ」
「爪だもの。人間だって、平気で爪を剪《き》るじゃないか」
「人間はそうだが馬だぜ、君」
「馬だって、人間だって爪に変りはないやね。君はよっぽど呑気《のんき》だよ」
「呑気だから見ていたのさ。しかし薄暗い所
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