書付を買えの、今に迷惑するのが厭《いや》なら金を出せのといわれるとこっちでも断るより外に仕方がありませんが、困るからどうかしてもらいたい、その代り向後《こうご》一切無心がましい事はいって来ないと保証するなら、昔の情義上少しの工面はして上げても構いません」
「ええそれがつまり私《わたくし》の来た主意なんですから、出来るならどうかそう願いたいもんで」
 健三はそんなら何故《なぜ》早くそういわないのかと思った。同時に相手も、何故もっと早くそういってくれないのかという顔付をした。
「じゃどの位出して下さいます」
 健三は黙って考えた。しかしどの位が相当のところだか判明《はっきり》した目安の出て来《き》ようはずはなかった。その上なるべく少ない方が彼の便宜であった。
「まあ百円位なものですね」
「百円」
 その人はこう繰り返した。
「どうでしょう、責《せ》めて三百円位にして遣《や》る訳には行きますまいか」
「出すべき理由さえあれば何百円でも出します」
「御尤《ごもっと》もだが、島田さんもああして困ってるもんだから」
「そんな事をいやあ、私《わたし》だって困っています」
「そうですか」
 彼の語気は
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