しろ》は高い屏風《びょうぶ》のように切立《きった》っているので、普通の食堂の如く、広い室《へや》を一目に見渡す事は出来なかったが、自分と一列に並んでいるものの顔だけは自由に眺められた。それは皆な何時湯に入ったか分らない顔であった。
こんな生活をしている健三が、この同宿の男の眼にはさも気の毒に映ったと見えて、彼は能《よ》く健三を午餐《ひるめし》に誘い出した。銭湯へも案内した。茶の時刻には向うから呼びに来た。健三が彼から金を借りたのはこうして彼と大分《だいぶ》懇意になった時の事であった。
その時彼は反故《ほご》でも棄《す》てるように無雑作な態度を見せて、五|磅《ポンド》のバンクノートを二枚健三の手に渡した。何時返してくれとは無論いわなかった。健三の方でも日本へ帰ったらどうにかなるだろう位に考えた。
日本へ帰った健三は能くこのバンクノートの事を覚えていた。けれども催促状を受取るまでは、それほど急に返す必要が出て来《き》ようとは思わなかった。行き詰った彼は仕方なしに、一人の旧《ふる》い友達の所へ出掛けて行った。彼はその友達の大した金持でない事を承知していた。しかし自分よりも少しは融通の利
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