どを読んでいた。北向の狭苦しい部屋で押し込められたように凝《じっ》と竦《すく》んでいる健三は、ひそかに彼の境遇を羨《うらや》んだ。
 その健三には昼食《ちゅうじき》を節約した憐《あわ》れな経験さえあった。ある時の彼は表へ出た帰掛《かえりがけ》に途中で買ったサンドウィッチを食いながら、広い公園の中を目的《めあて》もなく歩いた。斜めに吹きかける雨を片々《かたかた》の手に持った傘で防《よ》けつつ、片々の手で薄く切った肉と麺麭《パン》を何度にも頬張《ほおば》るのが非常に苦しかった。彼は幾たびか其所《そこ》にあるベンチへ腰を卸《おろ》そうとしては躊躇《ちゅうちょ》した。ベンチは雨のために悉《ことごと》く濡《ぬ》れていたのである。
 ある時の彼は町で買って来たビスケットの缶を午《ひる》になると開いた。そうして湯も水も呑《の》まずに、硬くて脆《もろ》いものをぼりぼり噛《か》み摧《くだ》いては、生唾《なまつばき》の力で無理に嚥《の》み下《くだ》した。
 ある時の彼はまた馭者《ぎょしゃ》や労働者と一所に如何《いかが》わしい一膳飯屋《いちぜんめしや》で形《かた》ばかりの食事を済ました。其所の腰掛の後部《う
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