さら》に懐疑の方向に一歩を進めて、其《その》言辞を実現し得たる時にすら、猶且《なほかつ》其誠実を残りなく認むる能《あた》はざるを悲しむものである。微《かす》かなる陥欠《かんけつ》は言辞詩歌の奥に潜《ひそ》むか、又はそれを実現する行為の根に絡《から》んでゐるか何方《どつち》かであらう。余は中佐の敢《あへ》てせる旅順閉塞の行為に一点虚偽の疑ひを挟《さしはさ》むを好まぬものである。だから好んで罪を中佐の詩に嫁《か》するのである。
底本:「漱石全集 第十六巻」岩波書店
1995(平成7)年4月19日発行
初出:「東京朝日新聞 文芸欄」
1910(明治43)年7月20日
※本作品で言及されている広瀬中佐(広瀬武夫:1868年−1904年(戦死))の詩とは、広瀬武夫が旅順港口閉塞作戦出発前に書き残した、次のものである。
「七生報国、一死心堅、再期成功、含笑上船」
※底本のテキストは、初出による。
※底本には、初出のルビを「適宜削除した。」旨の記述がある。
入力:砂場清隆
校正:小林繁雄
2003年4月1日作成
青空文庫作成ファイル:
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